ミラニスタのレポート

ミランの試合内容・結果、移籍情報等を綴っています

2010FIFA ワールドカップ南アフリカ大会 まとめ

7月11日、1ヶ月間に及ぶ激闘はスペインの初優勝で幕を閉じた。

第19回大会は史上初めてアフリカ大陸での開催となった。開催前に危惧された治安やスタジアムの完成の問題なのは大きくなることなく無事に全日程を終えた。窃盗に合ってしまう等のいわゆる重犯罪にはあたらない犯罪が起こることは避けられなかったが、結果として最悪の事態は起こらず、それよりもスタジアムの芝の問題や交通渋滞、公式球ジャブラニブブゼラといったものへ目が向けられた。


1978年アルゼンチン大会以来32年ぶりの“冬のワールドカップ”は初めてアフリカで行われたということ以上に多くの話題を生んだ。

・優勝候補を含む強豪国の失墜
・アフリカ勢の躍進ならず
・“ジャブラニ”に苦しんだ多くの名選手
・攻撃的サッカーが目立った守備的な大会
・人間の限界を感じさせた誤審の連続

当然、他にもいろいろ挙げればきりがない。それほど中身の詰まった大会だった。


①日本、変貌の躍進

 まずは、日本。一言で言えば“良い意味で前評判を裏切った1番のチーム”。世界中の多くの人が日本がベスト16に残るなんて正直思っていなかったはずだ。アジア勢4ヵ国は全てグループリーグ最下位での早期敗退で終わってもおかしくなかった。それが日本と韓国がベスト16に進み、日本は優勝国スペインを苦しめることになったパラグアイ相手にPK戦までもつれむ接戦を演じ、韓国は大会MVPフォルラン要するウルグアイに1点差負け。それぞれ大敗することなく、国民に感動を与える結果を残した。日本は自国開催以外、つまり“アウェー”の地で初勝利を含む2勝で勝点6を得てベスト16進出を決めた。ただ、決勝トーナメントに残った16ヶ国を見ると、パラグアイは現時点で“絶対に勝てない相手”ではなかった数少ないチーム。ベスト8という偉業を残すチャンスを逃したと言える。でも、スペイン戦でのパラグアイを見ると、やはりまだ世界の壁は高いと感じざるをえない。そして日本はこれからが大変。平均年齢の決して低くなかったチームは4年後当然別のチームになる。今回はたまたま負傷者も出ずに選手層の薄さを大きく露呈することもなかったが、“ワールドカップに出場するためのチーム”から“ワールドカップで勝つチーム”になるためにはこれまで以上に問題は山積み。次の大会で“アウェーで1勝した”は決して好成績にはならないからだ。

コパ・アメリカからユーロへ

 地域別に見るとグループリーグで断トツの好成績を残した南米勢。出場5ヶ国全てが決勝トーナメントに進出。その1回戦でブラジルとチリが当たってしまったがベスト8にも最高の4ヶ国が残った。酷いピッチコンディション、高地での戦いでの慣れ、そして高い技術力を持った南米勢の好調ぶりは当然のように思えた。ベスト4全てが南米勢もあり得た。ところが、終わってみればベスト4に残ったのはウルフアイだけ。ブラジルもアルゼンチンもパラグアイも全てヨーロッパ勢の前に屈した。ベスト4には見慣れた“ヨーロッパ3ヶ国、南米1ヶ国”の構図が出来上がった。

③次々消える優勝候補

 前回大会のファイナリストのイタリアとフランスがともに1勝もできずにグループリーグ最下位という結果に続き、前評判の高かった優勝候補が早々に姿を消していった。イングランドは“誤審”の影響を直接受けた不運のチームとなってしまったが、それがなくてもドイツには完敗だった。筆頭のブラジルはまさかの 2大会連続のベスト8止まり。オランダ戦での前半は確実に勝利を得る内容だった。後半への変貌ぶりは最も大きく期待を裏切ったチームとしてふさわしかった。アルゼンチンも同様。メッシ、テベス、イグアインら世界最高のアタッカー陣を揃えたチームはドイツの前に0-4の歴史的大敗。再び“マラドーナの大会”になることはなかった。そして“メッシはマラドーナに遠く及ばない”と多くの人に印象付けることになってしまったかもしれない。逆にパラグアイ善戦。ブラジルと並んで優勝候補筆頭に挙げられていたスペイン相手に惜敗。試合内容からするとブラジルやアルゼンチンよりもよっぽど可能性は感じさせた。

④若手躍動

 オランダを除いて上位進出国は比較的平均年齢の低いチームが目立った。特にドイツ。若手最優秀選手に輝いたミュラーは大会得点王にもなり、エジル、ケディラ、イェロメ・ボアテンク、ノイアーらがかつてない新生ドイツ披露の立役者となった。さらに今回は出場機会がほとんどなく、目立たなかったがタスキ、トニ・クロース、マリン、アオゴ等々逸材の宝庫となっている。早くも4年後の優勝候補筆頭はドイツ、と言ってしまえるくらいに。それに続くのがガーナ。平均年齢が最も若かったチームは今大会でも“アフリカ希望の星”としてアフリカ勢唯一ベスト8まで残った。その壁は今回破れなかったが4年後、それは期待できるかもしれない。スペインは今回確かに平均年齢は比較的若い方だった。ところがスタメン起用され、チームの中心として優勝に導いたシャビ、ビジャ、カシージャスプジョルシャビ・アロンソらはそこまで若くない。今のところ次の世代があまりいない。4年後間違いなく中心だろうというのがセルヒオ・ラモス、セスク、ピケ、ブスケッツくらい。決勝戦で印象を残したヘスース・ナバスもスピードタイプなだけに次の大会ではピークを過ぎてしまっている可能性もある。キーパーやアタッカーが不在なのも大きな問題だろう。

⑤立て直し、変化が求められる2014年ブラジル大会

 グループリーグから“負けたくない”ほとんど全ての国が守備的に戦った。結果としてポルトガルが北朝鮮に大勝した試合を除いて大差の付いた試合はなかった。それが強豪国を苦しめる方法となっているのは確か。しかし決勝トーナメントに残り、上位に進出したのは“攻撃の強いチーム”。当然と言えば当然なのだが、相手より多く点を奪えなければ勝てないのがサッカー。本来の魅力的なサッカーを捨てて結果を求めた批判されたブラジルやオランダは優勝できなかった。逆に本来の姿を貫いたスペインが優勝。得点こそ過去最少での優勝となり、失点も最も少なかったが、魅力的なパスサッカーは次第に調子を上げていった。ウルグアイも伝統的に守備が強いが“強者のカウンター”を持ってして好チームとして結果も残した。ドイツは言うまでもなく。4年後はブラジルでの開催。ドゥンガのサッカーは見せることは許されない。国民は圧倒的なたたみ掛ける強さを持ったチームしか支持しない。オランダも同様。そして変化とともに立て直しが求められるイタリア、フランス、イングランド、ポルトガル、アルゼンチンらにも注目大。守備が良くなってくると、今度は攻撃が良くなってくるはずだ。